必要に迫られて、簿記の勉強をしている。 簿記三級なのだが、不慣れなせいで面倒くさい。 飲み込みが悪いのは、昔からだから、今さら愚痴をこぼしても仕方ない。 翻訳者は生涯学習が必須だから、文句もいえないが、はかどらないのはつらい。 IT翻訳が本業なのだが、最近はコンピュータ以外の翻訳が多くて難儀である。 「知価社会」はきついなあ。 おじさんになっている余裕がない。 この場合、「おじさん」とは頭が化石になっている人のことだが。 本日は、ローズマリー・サトクリフを二冊を読んだ。 (マンガばかり読んでいるわけではないのだよ。) 『ケルトの白馬』 『ヴァイキングの誓い』 『ケルトの白馬』は、イギリス南部バークシャーにある古代ケルト人の地上絵「アフィトンの白馬」をテーマにした骨太な歴史ファンタジー。 超自然現象は全く出てこない、まっとうな歴史小説でもある。 ケルト学の成果を生かした考証と、ひとりの少年の成長をからめたサトクリフ・ワールドを堪能した。 生きるとはどういうことか。 責任とはどれほど重いものか。 過酷な定めを生きたケルト人の若者ルブリン・デュ。 これは現世の命を捨てて永遠を生きる芸術家の物語でもある。 古代ケルト人の地上絵については、wikipediaの「ヒルフィギュア」を参照してほしい。 ヒルフィギュア 『ヴァイキングの誓い』は、ビザンツ帝国で傭兵になるヴァイキングの物語。 正確に言えば、主人公ジャスティンはスカンジナビィア人ではなく、イギリス人であり、郷里を冦掠したヴァイキングにさらわれ奴隷とされた。 少年ジャスティンがヴァイキングの親友となり、自由を得て、ともに北欧から旅立ちキエフ公国、ビザンツ帝国で傭兵稼業に入る。 このあたりの展開が、いかにもサトクリフで、泣ける。 めまぐるしい運命の変転により、ジャスティンはついにギリシアに安住の地を見つけるわけだが、「自分の居るべき場所を探す苦闘」というサトクリフ流の人生に対する筋の通し方がいさぎよい。 「潔い生き方」というのは、サトクリフの主人公の特長だ。 去勢された「牡豚」になりさがらないために、サトクリフを読もう! これは、子どもだけの読み物じゃない、断じて。 |
すっかりユーウツ。 ホームページもブログも更新する気力がない。 仕事の環境が激変した上に、面倒くさい金融ソフトの翻訳をしたので、体力をえらく消耗している。 もう何にもする気力がない。 これは、とても「あぶない」と思う。 とにかく休養したい。 そうしないと−−キレそうだ。 運が尽きている感じがしていて、しばらく充電が要る。 思えば、この一年半。 仕事のことばかりで、忙殺されていた。 「忙しい」とは、「心を亡くす」こと。 まさにそんな一年半だった。 気を取り直して、ローズマリー・サトクリフの作品を紹介しよう。 英国の児童文学者であるサトクリフの初期作品は、ノルマン・コンクエスト(1066年)以前のイギリスが舞台。 扱う時代は、ローマン・ブリテン時代、アングロサクソン時代、十字軍時代。 ローマ軍団がイギリスに駐屯していた時代では、イルカの指輪を紋章とする一族の物語が有名だ。 このグループに属するのが、次の三つ。 『第九軍団のワシ』(*) 『銀の枝』(*) 『ともしびをかかげて』(*) 『辺境のオオカミ』 『王のしるし』 最後の『王のしるし』は、同じ時代だが、すこし異質。 アスタリスクのある作品は、「ローマン・ブリテン三部作」と呼ばれている。 『辺境のオオカミ』も同じ一族の物語だが、他とは二十年ほど執筆年代がずれているので、ひとまとまりにはならない。 この三部作は、サトクリフを世に出した傑作だ。 アングロ・サクソンの時代がテーマなのが、これ。 『太陽の戦士』 十字軍時代がテーマなのが、これ。 『運命の騎士』 女性作家だが、主人公たちがじつにいい「漢(おとこ)」である。 いかにもファンタジーの舞台になりそうな設定だが、妖精やオカルトのたぐいはまるで出てこない。 触ると血が噴き出てきそうな、人間ドラマだ。 「人がましい」気分になりたかったら、サトクリフをお勧めする。 今この国にただよっている気分とはまったく違う爽快な風を、胸いっぱいに吸えることをお約束する。 「人生に挫折した若者や男の子が、成長して自分の居場所を見つける」 サトクリフのテーマは、首尾一貫して、これだが、この一途さがいい。 同時に、主人公とかかわる女の子たちが生きる場所をみつける物語でもあるから。 「泣けるで」 −−と大阪弁のイマジンじゃないが、いいたくなる。 サトクリフは後にアーサー王伝説、バイキング、古代ギリシア、ケルト伝説をテーマにした作品も書いた。 翻訳された作品も多いが、まだまだ未訳のものも多い。 生涯つきあえる作家をみつけた−− これがとても嬉しい。 泣けるで! 近況報告 このところ順調に体重が落ちている。 現在は71.0キロ〜72.6キロのあいだを漂流中。 だいたい、71.2から72.4キロにおさまっているから、高校生時代よりも体重が少ない。 次の検査が楽しみ−−。 |
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