しばらくここの更新ができなかった。 忙しかったということもあるが、それ以上に「躓きの石」に出会ったことが大きい。 それは、『不良牧師!「アーサー・ホーランド」という生き方』という本だった。 知る人ぞ、知る宣教師アーサー・ホーランド。 日本名は、「岡田正之」というハーフである。 新宿歌舞伎町で、辻説法する白いスーツの謎のおじさん。 十字架を背負って、日本と韓国を行脚した行動派宣教師。 どうしたら、このすごい行動力が出せるのか。 生きくれていた自分にとって、アーサー・ホーランドの活力がたまらない魅力だった。 その秘密を知りたいと思って、この本を読み出した。 ハーレーダビッドソンに乗って、タトゥーをして伝道する。 いいじゃないか。 やりたいようにやる。 すごく素敵に思えた。 ところで、世間はもう少し世知辛い。 物知りな人から、アーサー・ホーランドの親友について聞いた。 松沢秀章という牧師である。 この人については、『不良牧師!〜』でも親友として紹介されている。 重度のシンナー中毒から立ち直って、牧師になった人物だ。 かなり変わった人だが、人柄についてはアーサー・ホーランドは絶対の信頼を寄せていた。 ところが、その松沢牧師は異常な死をとげる。 ホテルの窓から人妻を投げ落とし、自分も投身自殺した。 不倫とも、覚醒剤常用とも週刊誌に書かれた。 所属していた教会からも、週刊誌の内容に添ったような形で謝罪文がwebで掲載された。 2006年のことだった。 わたしが読んだのは、2002年出版の文庫本だ。 時系列的にいえば、事件前に書かれた本の内容で、後年の事件を斟酌するのはおかしいとはわかっている。 ただ、ネット上で見た記事と、『不良牧師!〜』で受けた印象がどうにもつながらない。 はっきりいうと、ネットの記事は悪意に満ちていた。 だれも松沢牧師をかばおうという書き手は見当たらなかった。 臭いものに蓋をするという雰囲気だった。 アナクロニズムといわれようと、何かおかしい感じがした。 これには何かあるかもしれないと直感した。 そこで、仕事の合間を縫って、ネットと書籍を検索しつつ、事件を考える日々が始まった。 個人的には、どちらの牧師にも面識はないし、プロテスタント系キリスト教にも興味はない。 だが、この件はかんたんに片付けてはいけない気がした。 |
© 工藤龍大