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■    ■                                      No.007  01/03/04    
■      ■          http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/   
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■        ■      ドラゴニア通信                                  
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■      ■          歴史と読書を楽しむサイト「ドラゴニア」更新情報
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==== Index ===================================================

01: 今週の更新情報
02: 先週のお薦め読書日記
03: 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編3)
03: 編集後記

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◆ 今週の更新情報

  今週は掲示板を日記代わりにしていました。
  読書日記の更新もままならず。
  本だけは読んでいるんですが……。
  まあ仕込みの時期だとわりきって、エネルギーをためることにします。

                                            (了)

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◆ 先週のお薦め読書日記

  こみいったことはかけませんでした。
  ついマンガ(アニメ?)に走る。(笑)

  でもねー、ほんとにマンガとアニメ(含・特撮?)って好きなんです
よね。

  政府がこのあいだ白書でマンガを文学と同等の重要な表現手段と位置
付けたそうです。
  いまさら何をいっておるんでしょうか、まったく。

  まあ、北朝鮮に親書をファックスする人が首班の国だ。
(筒井康隆でも、こういう首相は想像できなかっただろうなあ)。
  なにをいっても無駄でしょう。

  ところで、このごろ「お気楽読書日記」は「原書で読む世界の名作
編」に突入しそうな気配があります。(笑)
  といってもカバーできるのは、英語とドイツ語とフランス語だけだけ
ど。文庫で手に入ったり、文学史(もう高校の課程から消えたそうです
ね)で名前を知っているような人のものばっかりになりそうだけど、面
白いのだから仕方がない。

  30代後半に入ると、学校の教科書でぎったぎったに切り刻まれてい
た名作の味がほんとにわかるんですね。

  本の裏が読めるようになるのです。行間ばかりじゃなくて。
  金銭には換算しにくい実力として、「人間力」というものがあるんじ
ゃないかと思います。
  人生の味を感じるこの「人間力」という力はぴちぴちお肌が萎んでき
たり、撒き散らしたいほどの生命汁(笑)が減ってくると、どどーんと
成長するようです。

  いきなりドイツ語のレクラム文庫でゲーテ、ハイネ、シュトルムなん
て人たちの本が読みたくなったのには、そういう時期が関係しているか
もしれない。

  後で調べてみたら、ゲーテが「ファウスト」のプロトタイプ「ウ
ァ・ファウスト(Urfaust)」を書いたのは40代。ハイネの詩集の作品
もほとんどはその頃までに書かれたもの。
  文豪たちが自分と同じ年代か、年下のころに書いた作品だったんだな
あと改めて感じ入りました。
  文豪たちの生理学的時間と、自分の「人間力」が近づいてきたのかな?

  これらの本は3年前くらいから新宿紀伊国屋書店に並んでいたものです。
  このたび、やっと我が家に招待することができました。
  なぜ買おうと思い立ったのか。
  正直なところは、わたしにも分からない。
  ただ本とつきあいの深い人なら、本に呼ばれた経験があるでしょう。
  こんどもそうだと思います。

  呼ばれたから、あわてて買いにいった。
  どうも、そう思えてなりません。

  前にも書きましたが、わたしが読書日記を書こうと思ったのは小島直
記氏の一文を読んだおかげです。
  だれでも名前を知っているメリメの「マテオ・ファルコーネ」という
作品を熱く読んだ老企業戦士たちのエピソードを、小島氏は紹介してい
ました。
  本とは、本物の文学とはそうやって読むものだと教わりました。

  ドイツ語の本が片付いたら、「マテオ・ファルコーネ」も原書で読ん
でみたいと思います。
  日本語で読むなら、速い人なら10分もかかりませんよ、これ。
  それだけ短い物語です。

  ビジネスの世界で戦い抜いた二人の男の魂を振るわせた作品を、背筋
を伸ばして読みたい――欲も見栄もない、それだけのことなんです。

「獅子は兎を捕えるのにさえ全力を尽くす」というコトワザがあります。
本を読むこともそれに似ている。

  自分の持てるものをフルに使って立ち向かわない限り、本はその秘密
を明かしてはくれない。

  それは「愛」とか「出会い」とか、人生の真剣勝負すべてにつながる
真実なんでしょうね、きっと。

                                            (了)

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◆ 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編3)

  最初に訂正をひとつ。
  先週のここに間違いがありました。
「潜在記憶」という言葉をフロイトは使っていないという一文。
  これは「潜在意識」の間違い。
  あわてて書くと、これだから――。
  でも怒られないのをいいことに、とにかく連載を続けます。(笑)
  どうぞ、よろしく。


  今回は「夢判断」からフロイトの人生と夢のかかわりを紹介します。
もしかしたら、小此木啓吾さんの本を読んだ人ならとっくに知っている
こともあるだろうけれど。
  そこは素人の勇敢さ。
  差別用語でいいコトワザがありますね。「なんとか蛇に怖じず」とい
うやつです。

  さてフロイトの「夢判断」の扉には不思議なラテン語があります。
ここで引用しておきたいところだけど、やめておきます。
翻訳ではこうなる。
「天上の神々を動かしえざりしかば 冥界を動かさむ」

  これはラテン詩人ウェルギリウスが書いた叙事詩「アエネイアス」に
ある文章です。出典など、どうでもいいけど。
 「夢判断」という本にかけたフロイトの思いがにじんでいますね。
努力はしているんだけど、どうしてもうだつがあがらない四十歳くらい
のフロイトの叫びです。
  なんとか、この本で自分を学会や世間に認めさせたい。
  フロイトは必死でした。

  そのため「夢判断」で紹介される夢には、フロイト自身の人生に対す
る苦い思いや屈折した野心があふれています。

  夢というものに入る前に、フロイトがこの本を書くまでの人生を振り
返ったほうが便利かもしれません。

  フロイトは実は生粋のウィーンっ子ではありません。
  生まれたのは旧チェコスロヴァキアのフライブルクという村です。
  この地で裕福なユダヤ商人の子として誕生しました。
  家庭はちょっと複雑です。父は再婚で母とは親子ほども年が離れて
いる。先妻とのあいだにできた息子のうち長男はフロイトの母よりも
ずっと年上で、次男のほうは母と同い年くらいでした。
  だから幼いフロイトは年長の兄を父だと思い、実の父を祖父だと考え
ていたと伝えられています。兄の妻を母のように思い、実の母を姉か恋
人のように考えたとも。
  この複雑な家族構成から、フロイトの「エディプス・コンプレックス」
というアイデアが生まれたという学者もいます。

  さて父はフロイトが幼いとき商売に失敗して、一家は離散します。
  兄たちはイギリスへ向い、父と母はフロイトと妹を連れてウィーンへ
向かいます。
  典型的な貧窮ユダヤ人の生活が、一家を待っていました。
ウィーンで母は妹四人と弟一人を産みます。一家は貧乏のどん底でした。
その一家にとって、希望の星がフロイトだったのです。

  優秀な成績でギムナジウムから、最高学府ウィーン大学に進んだフロ
イトは衰えた一家を立て直すことを幼い頃から期待されていました。
  父親がウィーン時代どうやって生活費を稼いでいたのかは、今もって
わかりません。フロイトは教育機関で初等教育を受けた形跡がないの
です。
  労働者階級の子が入る中等学校に入って、すぐにギムナジウムに転向
しています。どうやら初等教育を授けたのは、父親だったようです。

  大学に入ったあと、フロイトは生理学を専攻して学者になるつもりで
した。しかし、学者では食べていけないと忠告されて医者になります。

  そしてユダヤ人の若い娘と婚約して、家庭を作る。両親や妹たちの面
倒も見ていたようです。

  傍からみれば幸福な人生ですが、フロイトはどうしても不満だった。
フロイトは「神経医」ということで、ヒステリーや精神性疾患の医者に
なったのですが、あんまりお金は儲からない。
  大家族の面倒もみていたので、いつも金欠状態でした。
  しかも妻は次々と子を産む。一見優雅な医者暮らしのようですが、家
計は火の車でした。

  それでいながら、フロイトは学会での名声も諦めてはいなかったので
す。
  なんとか学会で認められたい。金銭的にも楽になりたい。
  社会的欲求と自分の立場がぎゅうぎゅうと拮抗している。
  いわゆる中年の危機の真っ只中にいました。

  もう若くはないことを十二分に自覚しているフロイトが、世間へ自分
を売り込む必死の恫喝をもくろんだ。
「夢判断」の執筆には、そうした切迫した事情があります。

  このままでは終われない。
  自分が「何ものか」であることを、どんな手段をとっても世間に見せ
付けずにおかない。
  芸術家にありがちな、すさまじい緊張がフロイトを襲っていました。

  そして、気がついてみたら、自分自身が立派なうつ病患者、ノイロー
ゼ患者になっていた。

「夢判断」はうつ病患者・ノイローゼ患者フロイトの自己治療の報告書
でもあります。

  では、フロイトはどうやってそういう自分の病と対決したのか。
そのことは来週書くことにします。

                                         (この稿まだまだ続く)

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◆ 編集後記:

  忙しくてサイトの更新がままならない日が続いています。
  それでも時間をやりくりして、ゲリラ的にアップした日もある。
  しばらくはこの調子でやってゆきたいと思います。

  考えてみれば、そうそう悪いことばかりでもない。
  自分自身の中で、書きたいものが溜まっていって、醗酵する時間を持
てるようになりました。ものを書く上では、こういう状況も悪くないで
しょう。

  おかげで中身がそうとうディープになりつつあります。(笑)
  えっ、とっくになっている?
  本人としては、気張らずに「かるーく」書いているんですけどね。
  もともと性質がクドいから仕方ない?

  ところで昨今の出版状況は完全に30代をターゲットにしているみた
いですね。あとは気の若い40代とか(自分のことです……汗)。

  もう団塊世代じゃあ、商売にならないのかも。
  このごろ懐かしいマンガが続々と復刊されているけれど、昭和三十年
代くらいが最後に熱中した作品が多いように思います。

  まあ、わたしなんぞは未だに「仮面ライダー クウガ」や「アギト」に
熱中している。本屋さんにしてみればいいお客さんだろうな、きっと。

  ぜんぜん貫禄がない「とっちゃん坊や」であります。(笑)

  では、また来週。

            工藤龍大

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