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■    ■                                      No.010  01/03/25    
■      ■          http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/   
■        ■                                                      
■        ■      ドラゴニア通信                                  
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■      ■          歴史と読書を楽しむサイト「ドラゴニア」更新情報
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==== Index ===================================================

01: 先週のお薦め読書日記
02: 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編 6)
03: 編集後記

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◆ 先週のお薦め読書日記

  今週は比較的時間がとれた前半をメルマガに使ってしまいました。
おかげで、読書日記の更新はやっと祭日の20日と土曜日のみ。

  いかんなあ。
  でもまあ焦らないで続けることにします。

   「アイヌ語を勉強している私」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d23.htm#23

  このごろ熱中しているのがアイヌ語ですね。
  なんで、こんなことをやっているのかと思いつつ。
  典型的な逃避行動って、やつですか。(笑)


  それにしても、京都へせっかく取材旅行(?)してきたのにその成果
を発表する時間がない。やっと本日、その一部をアップしました。

   「京都の名刹とモミジの名所」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d23.htm#23

  京都の浄土宗のお寺ばかりが、なぜモミジの名所なのかという謎(?)
を解き明かした歴史推理――じゃないけれど、なかなかの長編です。
  必然のない偶然はないという証拠……であります。

                                            (了)

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◆ 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編 6)

  さて前回はフロイトの交友パターンについて書きました。
  今週は精神分析誕生の影のヒーローについて、いよいよ紹介します。
  その人の名前は、ウィルヘルム・フリース。

  フリースという人は、大抵のフロイト伝に登場します。
  それもどっちかといえば、否定的な人物として。
  パラノイアめいたマッド・サイエンティストみたいな描かれ方です。

  学会から天才を認められなかった孤独なフロイトが仕方なく付き合っ
ていた変人科学者というのが、もっとも好意的な表現でしょう。

  現代からみれば、たしかにフリースは変わった学者です。
「鼻反射神経症」という病名を考案して、神経症や内臓不調は鼻の粘膜
の一部を切除することで直るという学説をたてたことで芳しくない人物
として後世に記憶された人です。

  もっと奇妙なのは、男にも月経みたいな生体リズムがある。しかも人
間は両性的な存在で、女性的な生体リズム(月経という形で端的にわか
る)と男性的な生体リズムを複合させた周期に支配されている――とい
う学説です。
  これだけなら、現代のバイオリズム理論に似ているから、その先駆者
と考えられないこともありません。
  ただし、これでその人間がいつ死ぬか生体リズムで計算できるという
のはさすがに行き過ぎです。
  フロイトはフリース理論で自分の死期を予想しては、うつ症状をいよ
いよ悪化させていました。

  こういう人物ではありますが、非常に魅力的なキャラクターの持ち主
でもありました。
  フロイトの高弟に、ベルリンで医者をしていたカール・アブラハムと
いう人がいます。この人は晩年のフリースと交際していました。
この人は冷静な科学者肌の学者さんで、フロイトとは気質的に正反対。
だからこそ、離反もせずに師匠とつきあえたのでしょう。
  ただフロイトの優秀な弟子の例にもれず、師匠よりも先に死んでいます。

  この人が書き残した書簡によると、フリースは非常に理性的で、合理
的な考え方をする人だったそうです。しかもカリスマ的な魅力がある。

  精神分析家でフロイト研究家の小此木啓吾氏はフリースをこう評して
います。
「極端に自信が強く、はっきりものをいい、個々の事実からたちまち一
般理論へと飛翔し、巧みな言葉で自分の考えを発展させる人物だった」と。
                (「フロイト」講談社学術文庫)

  これはわたしたちの知っているフロイトのパーソナリティそのものだ!
  フロイトは、フリースと知り合ったのは夢判断を書く十年以上も前で
した。しかし急接近したのは、フロイトがノイローゼとなり、偉大な発
見をするために暗中模索していた時期でした。
  おそらくフロイトは、精神分析という新世界の戸口辺りをうろうろし
ていた。そこへ突き進む資質を必要としていたのでしょう。
  それには、小此木さんのいうようなパーソナリティがどうしても必要
だったのです。

  明らかに処女作「ヒステリー研究」と「夢判断」では文体が変わって
いる。「夢判断」は精神分析家フロイトの誕生だけではなく、20世紀
の作家フロイト誕生の瞬間でもあります。

――と、ここまで書いているうちにもう日付が変わりそうです。
  そろそろ寝ないと明日がつらい。

  この続きは来週書くことにします。

                                         (この稿まだ続く)

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◆ 編集後記:

 「国宝鑑真和上展」には行かれました?
  惜しくも本日まででした。
  見逃した人は唐招提寺へ行くという手もある。
  感謝をこめて、御像に御礼の挨拶をするのが日本人としての筋という
ものじゃないかと私は思います。余計なお世話でしょうが。

  今も私の机には鑑真和上のお姿があります。
  タネをあかせば、会場で買ってきた金属製のしおりに御像の写真がは
め込まれているだけですけど。
  そこにはこう書いてあります。

       鑑真 668−763
          『是為法事也 何惜身命』

  鑑真和上は僧の派遣を乞う日本僧の頼みを聞いて、弟子たちに志願者
はいないかと問いました。弟子たちは危険を冒して日本へ行くことを躊
躇します。
  それをみて、五十五歳の鑑真和上が言った言葉がこれ。

(これは法事のためなり。何ぞ身命を惜しまん。諸人ゆかずんば、我す
なわちゆかんのみ)

  こういう人のお姿を日々見ていると、泣き言なんて言えませんね。何
事に対しても。わたしは特に愚痴の多い人間なので、反省することしき
りです。

  ところで、本日はあの森首相を少し見直しました。
  プーチンとやけに堂々と渡り合って、とにかくもエリツィン前大統領
と小渕首相の会談を文書化することをとりつけた。
  絶対に領土返還なんか出来るはずがないプーチンをそこまで譲歩させ
るとは、思ってもみませんでした。

  TVニュースは会談後に、ロシア国内にある森首相の父親の墓に詣で
る両首脳の姿を映していました。森首相のお父さんは新潟県のどこかの
町長さんで、両国親善に力を尽くした人らしい。
  死後、その遺骨を分骨してロシアにお墓を作ったのです。

  そうか、森首相は父親の思いに引かれて、どうしてもこの会談は自分
の手でやりたかったのだなと納得してしまいました。
  意地の悪い政治通は別の見方をするかもしれませんけれど。

  首相の器とはとても呼べない森首相ですが、国政に打って出ようとし
た原点はここだったのかと、見ているこちらも襟を正す思いです。

  人の悪そうなプーチンに、面の皮が厚い日本のおっさんが泣きながら
「スパシーボ」(ありがとう)とロシア語で御礼をいう光景はなかなか
美しいものだったと思います。

  人間モリヨシロウの真心をはじめて見た――というのは、言いすぎで
しょうか。

  では、また来週。

            工藤龍大

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