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■    ■                                      No.012  01/04/12    
■      ■          http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/   
■        ■                                                      
■        ■      ドラゴニア通信  特別号                          
■        ■                                                      
■      ■          歴史と読書を楽しむサイト「ドラゴニア」更新情報
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==== Index ===================================================

01: 先週はお休みしました
02: 編集後記

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◆ 先週はお休みしました

  このあいだの土日は急ぎの仕事をしたためメルマガはお休みしまし
た。金曜日にビデオを二本観ただけで、あとは働きづめです。

  平成大不況のデフレ時代に仕事があるのは良い事だと肝に銘じており
ます。雑誌「東京人」の紹介されていた90歳の古本屋のご主人もこん
な不況は見たことがないそうです。
  昭和大恐慌を見た人がいう言葉には、おもみがありますね。

  ところで今週は変則的に木曜日に発行します。
  いわば特別号というわけです。
  ただし、ネタがない――というより時間がない。
  そこで、お休みのお詫びでお茶を濁させていただきます。

  目下、国語辞典と「夜明け前」(島崎藤村)を心のよすがに仕事に没
頭しております。幕末の暗い世相は、まるで現代日本そのものを彷彿と
させますね。
  主人公青山半蔵は藤村の父がモデルで、馬篭宿の本陣庄屋という封建
制度の一端をになう立場のひと。
  平田篤胤の国学を頼りに、宿場の人々の暮らしを守ろうとする青山半
蔵の努力は、明治以降の歴史を知っている人間には痛々しい。

  善意にあふれているけれど、封建時代の宿場制度のしがらみと発想か
らどうしても抜けられないのです。
  そこを知りぬいて書いた藤村は、やはり凄い作家です。
  膨大な本陣の記録を読んで書いたというだけあって、人々の暮らしが
息づいています。
  小説というジャンルの面白さは、「暮らし」を描くということにつき
る――と改めて思いました。

  このあいだ池波正太郎氏のエッセイ集「日曜日の万年筆」を読んでいた
らふと胸をつかれることが書いてありました。

  徴兵された池波青年が終戦とともに焼け野原となった東京へ帰ってくる。
  さすがの池波さんも腑抜け同然だったそうです。
  宗教もなく、すがるべき何ものももたなかった池波青年は「暮らし」
というものを見つめなおし、それを美しいものとすることで、生きる
力を取り戻したそうです。
  観念的な理想ではなく、四季折々の食べ物、着る物に工夫をこらす。

  池波流のダンディズムの根底には、現実主義に徹した顔の下に理想を
隠したイギリス紳士のそれと同じものがあったのでした。

  一見すると、ニヒリズムに見えるけれど、実際につきあうとこういう
考え方をする人のほうが暖かい。そして人に優しい。

  「暮らし」という視点をもてるようになったとき、人は大人になれる
ようです。言葉の本当の意味で。

                                            (了)

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◆ 編集後記:

  ここのところサイトはもっぱら掲示板に日記もどきを書くばかり。
  こんな調子ですけど、よろしくお願いします。

  では、また来週。

            工藤龍大

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