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■    ■                                      No.013  01/04/22    
■      ■          http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/   
■        ■                                                      
■        ■      ドラゴニア通信                                  
■        ■                                                      
■      ■          歴史と読書を楽しむサイト「ドラゴニア」更新情報
■    ■                                                (週刊)  
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==== Index ===================================================

01: 先週のお薦め読書日記
02: 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編7)
03: 編集後記

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◆ 先週のお薦め読書日記

  今週も読書日記は更新してませんね。
  その代わりといってはなんですが、昼間は掲示板「よい書っ! コラ
っ書」に日記もどきを書いています。
  雑談モードは完全にこっちに移行しています。(笑)

  ページを書いて、FTPでサーバーにアッブする手間が省ける――な
んて、ひどく勝手な事情でこんなことになっています。
  掲示板をリード・オンリーにして、日記を書いているひとの気分が良
くわかりました。

  雑談をのぞいてやろうという親切な方は、こちらへどうぞ。(笑)

  「よい書っ! コラっ書のURL」:
    http://www64.tcup.com/6403/torakon.html

  ところで、ご存知かもしれませんが、掲示板のログは、Geocities に
あります。
  自称、「ドラゴニア別館」がそれ。

  こちらのURLは:

  http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/9539/bk1/index.html

  別館のログがあるおかげで、掲示板を日記代わりにしている――とい
うこともないわけではありません。
  それでいいのかと、マジメなサイト運営者なら悩むだろうけど。(笑)

  弁解じみているけれど、サイトってのは長く続けることに値打ちがあ
る。形式にこだわって、更新ができなくなって自然消滅するサイトがい
かに多いことか。

  とにかく、続ける! 毎日書く。現状では、これで手一杯です。
  変則的なかっこうですけど、これからもよろしく!

                                            (了)

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◆ 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編 7)

  ずいぶんこのコーナーをお休みしていました。
  もう前回までの話は、すっかり忘れてしまった――という人がいても
不思議じゃない。

  じつは書いているほうもそうでして、今まで何を書いたのか、原稿を
見ながら記憶をたどっていました。
  書き手がこれだから――。

  気を取り直して、フロイトの親友ヴィルヘルム・フリースについて書
くことにします。
  前にも書いたとおり、この人こそ、精神分析誕生の影のヒーローなの
です。

  フリースについて、あまり詳しいことはわかっていません。
フロイト研究家ジェフリー・M・マッソンによると、四冊くらい医学関
係の著書を出版したようです。
  ただ医学博士の学位をとった形跡はなく、フロイトのように無料奉仕
の私講師から員外教授という大学教授の肩書きを手に入れたこともない。
そうした意味で言えば、名誉と肩書きを欲しがるドイツ人医師の世界で
は成功者とはみなされなかったはずです。

  フロイト自身は、ウィーン大学医学部の員外教授という肩書きを手に
入れたおかげで、上流階級の片隅にもぐりこみました。
  おかげで、特異な性的一元論をとなえても、自分がいうようなひどい扱
いを受けたことはありません。
  自伝で書いているように、「エディプス・コンプレックス」を唱えた
せいで、世間から迫害されたという事実はありません。
  アカデミズムのギルドにはむしろ保護されていたというべきでしょう。
  迫害があったとすれば、むしろ晩年のナチスによるオーストリア併合
以後のことです。

  フロイトといえども、作家の通弊である誇張癖を免れているわけじゃ
ありません。作家のいうことは、いちおう疑ってかかるほうがいいみた
いです。夢を壊して申し訳ありませんが……。

  フリースとフロイトとの付き合いは、エリートのフロイトがマッド・
サイエンティストじみたフリースに擦り寄ったと言う他ありません。

  フリースのパーソナリティを学習することによって、フロイトは無意
識の言語化というアイデアを実現したと、わたしは考えています。
  その意味で言えば、フリースは徹底的にフロイトに利用し尽くされた
といえるでしょう。
  恐ろしいのは、当のフロイトにはそんな意識がまるでなかったことで
す。フロイトにしてみれば、恋するようにフリースにのめりこみ、ある
日熱がさめて、騙されたように相手を恨み、捨て去った。
 「なんなんだ、これは」
  呆然としたのは、フリースでした。

  ふたりは一年に数回、ドイツ/オーストリアの保養地やお互いの
街(ベルリンとウィーン)で会って、数日ホテルに泊り込んで、議論を
戦わせたようです。
  これをふたりは「学会」と称していたのですが、その前後にやりとり
した手紙を見ると恋人どうしのラブレターと読めないこともない。
  写真で見る限り、ふたりとも濃い顎鬚に覆われた中年男同士です。
  ふたりは同性愛の愛人関係にあったと言われるのも、無理はありませ
ん。どっちも結婚していて、子どももいたのですが……。

  フロイトは家族には謹厳なお父さんとして接していたけれど、フリー
スにはまるで小娘のように接しています。まるで甘えているようです。
  どうもユングとの付き合い方といい、フロイトは姿のいい男にはヘン
な態度をとるみたいです。

  そういえば、後年のフロイトは同性愛者の患者にはやけに物分りがよ
かった。そういうことはやめなさいとは、いわないお医者さまでした。
  また、こんなこともあります。
  フロイトの娘、アンナ・フロイトは生涯独身でした。
  その理由は単純明快。彼女は女性同性愛者だったのです。
  相手の名前もわかっています。
  血筋ということを考えると、やっぱり……と思ってしまいますね。

  まあ以上のことは冗談みたいなものですが、フロイトは人間は両性的
な存在だと認めています。
  だから、肉体関係があったかどうかはそっち方面の好きな人にまかせ
るとして、感情面ではフリースとのあいだにただの友情をこえた愛情関
係があったことを、自分でも認めています。

  愛情が他者のパーソナリティの取り込みプロセスだとすれば、そうい
わざるをえないでしょう。だからといって、薔薇族的な世界に空想を逞
しくするのはお盛んすぎる。(笑)

  フロイトが「性」という場合、それは生殖器ばかりを意味しているわ
けではありません。
  むしろ、この言葉でもっと全人的なもの、社会的なものを表現しよう
としています。
  レヴィ・ストロースが看破したように、「性」とは人間が社会を作る
原点です。婚姻を通じて、人間の社会は構成されている。

  人類は、チンパンジーやボノボという二種類の類人猿と遺伝子が
90パーセント以上同じだそうです。
  かれらの社会も「性」的な行動を媒介にして、構成されている。

「性」とは社会活動そのものだ!
――ということは、禁欲的苦行を発明したメソボタミア文明のマギか
ら、ヴェーダ時代のインドの行者の頃から、とっくに知られていたこと
でした。

  どうやらフロイトはおぼろげながら、そのことに気づいていた。それ
をどうやって表現するか。それが「夢判断」のもう一つのテーマでした。

  フリースというパーソナリティは、行き詰まっていたフロイトに活路
を与えるものだったのです。

  フロイトとフリースの付き合いを、ふたりの手紙を精読しながら考え
ていくことで、作家フロイト誕生の秘密が明かされると、わたしは思っ
ています。
  ただ、そのことはまだまだ手に余る問題が多い。当面は宿題としてお
くことにします。

  ところで、フリースのほうではフロイトから縁切りされても、まだ昔
の友情を忘れはしませんでした。才能の成長以外のことには冷淡な天才
と違って、人間味があった人なんでしょうね、きっと。

 そのことについては、来週書く予定です。

                                      (この稿もうちょっと続く)

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◆ 編集後記:

  をっと忘れていた。
  土曜日に、読書日記を更新していました。
  ちょっと大袈裟ですが、人生四十歳寿命説と「自民党=徳川幕府論」
というのがテーマです。なんのことか、わからないけど興味がある方は
こちらまで。

    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d24.htm#20

  あ、そうだ。
  もう一回更新していました!
  先週、名古屋へ行って名古屋城と熱田神宮を観てきたのです。
  そこで発見した意外な事実とは?

  おもわせぶりに書いてみましたけど、もう読んだです?(笑)

    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d24.htm#16

  では、また来週。

            工藤龍大

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ドラゴニア通信:  歴史文学と鉄人的読書日記のサイト「ドラゴニア」
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