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■    ■                                      No.018  01/06/18    
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■        ■      ドラゴニア通信                                  
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==== Index ===================================================

01: 先週のお薦め読書日記
02: 特別企画「イスラムの世界史的役割」
03: 編集後記

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◆ 先週のお薦め読書日記

  今週はなんとか月曜日から木曜日まで更新できました。
  これで日刊の看板をはずさずにすむ。(笑)

  でも読書日記は一日一冊というわけにはいきませんね。
  英語版 NewsWeek でお茶を濁しています。
  あとは夏目漱石の東大講師時代の講義録「文学評論」とか、英語版で
アメリカン・コミックのホームページを読んだりとか。
  そうそう明治の詩人、薄田泣菫の「茶話」なんかも読んでいる。
  読むほうが忙しくて、日記にまで手がまわらないのが現状です。

  ところで、本日、本屋でマンガ雑誌のコーナーをみたら、朝宮騎亜が
バットマンをローカライズ(業界用語ですいません!)してました。
月刊「マガジンZ」がそれ。
  永井豪の「デビルマン」をモトネタにした「アモン創世記」なんての
も別の人が連載していた。
  どうも、漫画界もオリジナリティが枯渇しているらしい。

  別の雑誌で島本和彦が仮面ライダーの各シリーズを漫画化しています
ね。この間は「ライダーマン」だった。

  「仮面ライダーV3」で登場した四番目の仮面ライダー、「ライダーマ
ン」は作品中で爆死したはずだけど、その後タヒチで生存していたとい
う設定で、以後のライダー・シリーズにゲスト出演を続行しています。
  実演した俳優の山口暁(忍者部隊月光、電人ザボーガーにも出演)さ
んはとっくに病気で亡くなっているのですが……。
  山口さんは、俳優を引退してどこかの大学生協で、食堂の職員をして
いたそうです。学生たちからは、「ライダーマンのおじさん」と親しま
れていたとか。

  初代ライダーの藤岡弘さんは、つい数年前まで「仮面ライダー」の話
題に触れることをとても嫌っていたそうです。
 「大勢のスタッフが死んでいるから」というのが、その理由でいかにも
藤岡さんらしい。

  でも、生き残りのスタッフから「貴方がライダーを語り継いで行かなけ
れば死んだ仲間は浮かばれない」と説得されて、ライダーの演じることを
決意したそうです。
  天本英世(懐かしの死神博士!)のナレーションで「君の血を熱くさせ
るオートレース」のCMはこうして生まれた!

  こういう人たちが作っているから、仮面ライダーはやめられない。(笑)

  今週は「北斗の拳」と「仮面ライダー」ネタで、掲示板の方が盛り上
がってしまいました。
  そんでもって、お薦めは掲示板日記(笑)だったりします。
  連載(?)「修羅の国はどこ?}をどうぞ、お楽しみに。

                                            (了)
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◆ 特別企画「イスラムの世界史的役割」

  今回もタイムアウトで、番外編です。
  「21世紀に読み継ぎたい作家」は次回にさせていただきます。
とにかく時間が足りなくて――面目ない。(恥)

  イスラムといえば、アフガニスタンのタリバンとか、イスラエルの自
爆テロとかで、自称名誉白人(と思い込んでいる)の日本人には評判が
悪い。
  アメリカの「無法者国家」というのが、イスラムに対するイメージで
しょう。
  しかし、イスラム文化は15世紀までは、間違いなくインド以西の世
界では文化の中心だったのです。
  西欧文明に染まった日本人は、ヨーロッパに過剰な思い入れをしてい
ますが、西欧の文明は15世紀まではイスラム文化の模倣であったとい
っても過言ではない。

  念のために書いておきますが、イスラム=アラブというのは大間違い
です。イスラム文化の担い手は、当方ではペルシャ(=今のイラン)で
あり、西方ではイベリア半島でした。

  イタリア・ルネサンスの繁栄は、オスマン・トルコとの貿易の結果で
す。イタリア人の発明の才を過大評価するのは、残念ながら誤りです。

  近代ヨーロッパの文化は、南欧に萌芽を持つのですが、その南欧文化
はいずれもイスラム文化の影響を色濃く受け継いでいる。
  それもそのはず、古代ローマ文化の直系の後継者はイタリア人ではな
く、イスラム圏です。
  というのも、ローマ帝国の時代すでに、文化の中心地はローマではな
く、コンスタンチノープルを中心とするバルカン半島や小アジアへ移っ
ていた。その地を併呑したオスマン・トルコが、ローマ文明の遺産を受
け継いだのは自明の理です。

  ヨーロッパ文化がアジア・アフリカを植民地できたのは、ひとえに銃
器と鋼鉄生産の発達によるところが大きい。
  それは16世紀の宗教改革以後でした。
  17世紀になると、中欧と西欧は恒常的な戦争状態に突入する。
  いっぽうイスラム世界とアジアには、力の均衡による平和が訪れる。
  これを西洋かぶれした学者は、アジア的停滞と呼びます。

  その後、ヨーロッパ世界での殺し合いはフランス革命とナポレオンの
登場に至るまで手詰まりとなり、アジアやアフリカでの代理戦争を行わ
れた。ある意味で、AA世界の植民地化は、中・西欧の代理戦争の副産
物といっていいでしょう。

  このころになって、はじめてヨーロッパはアジア・アフリカの優位に
立てた。事件史的にいえば、インドのプラッシーの戦い(1757年)、極
東ではアヘン戦争(1840年)がそれ。
  イギリスがインドを併合したのは、1858年のことです。

  こんな高校の世界史を繰り返すのは、他意はありません。
  ヨーロッパの優位は19世紀になってやっと確立したということを強
調したいからです。
  それを可能にしたのは、決してヨーロッパの文化の優位ではなく、む
しろ鋼鉄の生産と機関銃の発明によるところが大きい。
  機関銃こそは、紀元前5世紀に出現したスキタイ文化に始まる遊牧民
族の機動部隊を制圧できた画期的な武器でした。

  図式的すぎるかもしれないけれど、インド以西の文明はこのように発
展してきたと考えていいかもしれません。

メソポタミア → エジプト → ギリシア (ヘレニズム)→ ローマ 
   → イスラム → 南欧(プロヴァンス、イベリア半島)

  ここでイギリスだの、ドイツだの、フランスを書かないのは、これら
の国々は、十字軍という名の掠奪を行って、イスラム文化圏と南欧文化
圏から冨と文化を強奪した強盗であるという基本認識に立つからです。
  つまりは、英独仏の豪華絢爛たる建物は、イスラム文化圏及びその通
称地域(イタリアを含む)から強奪してきたテクノロジーの産物であっ
たということです。
  ローマ以後の文化の主体は、あくまでイスラムだったけれど、そうい
う認識があるのは当代のヨーロッパ文化圏の鋭い学者たちであって、日
本で西洋史を教える大学の先生たちではない。

  だからこそ、イスラム圏の人々のプライドが見えず、民族紛争にとん
ちんかんな解釈をくだすのではないか。
  などと、素人のわたしは考えざるを得ません。

  たしかに13世紀ルネサンス以降、西洋の歴史については、日本人は
やたら詳しくなった。
  でも、それは19世紀に世界を支配したヨーロッパ文明を理解するた
めに、重箱の隅をつつくように詳しく調べた結果であって、ヨーロッパ
文明をテイクオフさせたイスラム文明に対してはあいかわらず無視して
いる。

  そう考えるのが、自然でしょう。

  じつは私自身がそうでした。
  イスラムについて、人に講釈する資格は全然ないといわざるをえない。
ただ、それではもういけないという自覚はあります。

  わたしが自分のサイトでオーストリアを主題に選んだのも、そういう意
識があるからです。
  ご存知のように、オーストリアの支配者ハプルスブルグ家は、イスラ
ム勢力をイベリアから放逐したスペイン王家を簒奪し、いっぽうでイス
ラム世界の代表者(オスマン・トルコ)から中欧・西欧を防衛しつづけ
た稀有な体験を持った。

  神聖ローマ帝国とその後身、オーストリア帝国は、文明の交差点に位
置しつづけたのです。文明史的な意義からいえば、その価値はイタリ
ア・ルネサンスの都市国家よりも大きいかもしれない。

  何度も紹介してきましたが、「20世紀はドナウの源流で生まれた」
という名言があります。
  ドナウの源流とは、まさにオスマン・トルコ帝国と神聖ローマ帝国と
いう二つの文明の衝突地点でした。先端的な文化は、異文化の衝突地点
でしか生まれないものです。
  20世紀がドナウの源流で誕生したのも、当然でしょう。

  以上、長々と書いてきましたが、いいことは唯一つ。
  イスラムは人類の文明史において、7世紀から16世紀まで特に西方
世界では常に主体でありつづけた。

  そのことを忘れて、コーランを破ったり、パレスチナ問題を冷ややか
にみていると、日本人はやがてエラことになるのではないか。
  おせっかいといえば、それまでですが、どうも気になってならないの
です。

                                      (了)
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◆ 編集後記:

  先週と同じ繰言ですけど……
ハリー・ポッター第三巻目は、まだ読了していません。
  今週こそは、とは思うんですけどね。(苦笑)

  ところで、新刊古書店でやっと本を処分しました。
  別れは寂しいけれど、本を世の中に返すんだと思う他はありません。
  わが家で死蔵していても、仕方がない。
  でも、結局本を売るたびに分るのは、スペース代(=家賃当たりの空
間占有価格)の方が購入費用よりも高いという事実。
  この状況は絶対的におかしいと思うのですが……。

  別れがあれば出会いもある。
「岩波文庫 解説目録」を眺めていると、読了済みと購入済みの本がど
んどん増えていく。「むふふふ」と笑いながら、目録を眺めています。
かつて書庫の中心だった翻訳冒険小説とか翻訳SF小説がどしどし岩波
文庫に置き換わって行く。
  これもまた時の流れと申せましょう。
  結局、本が減るわけがない。
  居直って、買いつづけるしかありませんね。

♪男が目方で売れるなら、こんな苦労は〜〜
こんな苦労はかけまいに。かけまいに。♪

            工藤龍大

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