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■    ■                                      No.021  01/07/22    
■      ■          http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/   
■        ■                                                      
■        ■      ドラゴニア通信                                  
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■      ■          歴史と読書を楽しむサイト「ドラゴニア」更新情報
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==== Index ===================================================

01: 先週のお薦め読書日記
02: 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編10)
03: 編集後記

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◆ 先週のお薦め読書日記

  あいかわらず好調に更新しているのは、雑談日記ばかり。
  システムを比べると、こちらの方が断然更新が楽なせいです。
  その代わり、Geocities がダウンしたら、データがなくなる。
  なるべくバックアップしているけれど、いつ何時ダウンするか分らな
いのが、Geocities の日記ツールの恐ろしいところ。

  一期一会と思って、読んでいただけたら、幸いです。

【今週の雑談日記−白昼の虹】
   「韓国の歴史教科書を入手! ―あっ!戦前の教科書が…」
       邦訳された韓国の歴史教科書を読みました。本来なら読書日記
       で書くことだけれど、わたしの都合でこちらに書いてしまいました。
       民族分断・経済の行き詰まり――現代韓国の悲劇が教科書に色濃
       く反映しています。日本人である私たちには、余裕のある応対が
       必要です。

   「神代文字の謎!」 
       江戸時代の偽作とされる(日本)神代文字。これのリンクを集め
       てみました。
       国粋学者の欺瞞と怒るなかれ。
       人生には余裕が大切だと思う読書家です。

   「謎が謎を呼ぶスペインの城!」
       英熟語の考証をしてしまいました。
       こういう素朴な疑問を解き明かすのが、好きなんです。

【今週の読書日記】

   「古文書が語る神国日本の秘密」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d27.htm#16

  タイトルと中身の乖離に唖然とした人も多いのでは?
  ……だから、人生には余裕が必要なんだってば(汗)。

   「土偶に教わる美女の条件」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d27.htm#17

  わたしが創設した美女学によると、美女は「白ヘビ型」「類人猿型」
「河童型」に分類できる。この壮大な仮説(笑)の証拠こそが、縄文時
代の土偶だ!
  ――というより、「発掘された日本列島2001年」展の感想です。
  笑かして申し訳ない!

   「配分の問題?」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d27.htm#20

  韓国歴史教科書を読んだ感想です。たしかに日本人としては腹がたつ。
  書き方に意地の悪い皮肉のひとつもいいたくなる。
  しかし、そういうお隣さんとぶん殴りあわずに、仲良くやってゆく方
  法を模索するのが、国際化というものでありましょう。
  「地球村」の住人として韓国国民は云々と書いてある記述に、かそけ
  き希望を抱いて粘りつよく考証しつづける――という戦略しかないよ
  うな気がします。
  でも、この教科書を読んで感動したのは、どんな絶望的な状況に置か
  れても自棄をおこさずに、耐えつづける朝鮮民衆の姿でした。
  韓国のエリートたちが誇る朝鮮文化よりも、かれらエリートに踏みつ
  けにされながら強く生きて行く民衆の姿にこそ、朝鮮民族が世界に送
  る最大の遺産があると、わたしは確信しました。

                                            (了)
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◆ 企画「21世紀に読み継ぎたい作家」(フロイト編10)

  振り返ってみると、このシリーズは17号以来ストップしたままです
ね。それ以降に購読してくれた方には、なんのことか分らないかもしれ
ない。
  そこを承知の上で、乗りかかった船だと思ってお付き合いください。
  発行元「Pubzine」のサイトにあるバックナンバーを見れば、大体の
流れは分ると思います。

  さて、長い間ストップしていたフリースとフロイトの話にとりかかる
ことにしましょう。

  前回まではハンガリーの精神分析医シャンドール・フェレンツィにつ
いて書いてきました。今ではあまり知られていないけれど、現代精神分
析学の隠れた源流のひとりです。
  このフェレンツィがフロイトと決裂する前に、二人でバカンス・シー
ズンにイタリア旅行へ出かけていた。
  フェレンツィとしては、師匠のフロイトと旅行が出来るので嬉しくて
ならない。この機会に師匠からじきじきに精神分析を受けたいと考えま
した。
  これは、現代なら「指導分析」というトレーニングに相当します。こ
の指導方法を提唱したのが、他ならぬフェレンツィなのだから、当然と
いえます。
  これを行うのは教育的効果があるだけではなく、将来の精神分析医に
潜在的な精神疾患の素因があることを発見するためでもあります。
  フロイトが指導した有能な弟子たちに、自殺者が多いことは歴然とし
た事実です。精神療法は、治療者のかかえる潜在的な精神疾患的素因を
発現させてしまう危険をはらんでいます。
   知能が高く、治療に熱心な精神分析家が、ノイローゼ患者と接した場
合、むしろ自分自身の精神疾病が発病してしまうのです。
  もともと、そういう素因のある人ほど心理学者や精神治療家になりた
がる傾向がある。
  フロイトの有能な弟子たちが自殺した悲劇から、この事実が遅まきに
わかってきて、それを防ぐ措置が講じられるようになったのです。

  ところが、フロイトはフェレンツィのいうことには理解を示すのです
が、自分がそれを行うことは断固として拒否します。
  いぶかるフェレンツィに、フロイトは「もう自分は他者とかかわるエ
ネルギーがない」と意味深長な言葉を投げかける。

  じつはフェレンツィは、気づいていたのようです。
  フロイトが境界例的素因を秘めていることを。生涯、フロイトの神経
症は治らなかったらしい。
  それどころか、精神分析のカリスマに祭り上げられながら、人間関係
が次々と破綻していくフロイトこそ、精神分析が対象とするべき患者な
のではないかと。
  フロイトの問題のなかに、フリースがあるとフェレンツィはあたりを
つけていた。
  後年、フロイトがフェレンツィと不和になるのは、自分を治療対象に
しようとする弟子に腹を立てたのも一因かもしれません。

  聡明なフェレンツィは、フロイトの意味深な言葉からこんなことを悟
ったのではないかと思います。
(わたしのリピドーは、フリースに固着している。もう他の人間が入る
余地はない!)

  こうなると、中年男の同性愛になって女性読者には嬉しいでしょうけ
れど、リピドーはただ性的な意味をもつだけではない。本来は精神のエ
ネルギーを指す。
   エネルギーという概念をまだ物活論のレベルでしか語れず、現代の
現象学的な用語さえなかった当時としては、ひどく誤解をうけやすい言
葉を使うしかなかった。
  今なら「意識のベクトル」「意識の指向性」と言い換えられるでしょう。

  もっとはっきりいえば、中年以降のフロイトの人格は、フリースのそ
れを吸収・統合して構成されていた。
  わたしたちの知っているフロイトは、モラビア生まれでウィーン育ち
のユダヤ人青年ジギスムント・フロイトではなく、ベルリン生まれの知
的ユダヤ人ヴィルヘルム・フリースとジークムント・フロイトの合成生
物(キメラ)なのです。
(ジギスムントとは、フロイトが大学時代に改名する前の名前。いかに
も東欧人くさい、この名前をフロイトは嫌っていて、ドイツ人風の名前
に改名したのです。)

  ここまでくると、もうわたしの思考の産物なので、フェレンツィに責
任を負わせるのは気の毒ですね。

  なぜ、こう考えるかというと、フロイトの文章スタイルが、フリース
と二人だけの「学術会議」をやった時期とその前で違っているからです。
「ヒステリー研究」を書いていた頃のフロイトの文章はとても読みやす
いものでした。論旨が直線的につながっていて、見通しがとてもよかった。
明晰そのものです。
  ところが、フリースと二人だけの「学術会議」をやった後半の時期から
文章は複雑で錯綜してみえる。論旨がすっきり通っているようにもみえない。
  理由は読んでみれば簡単にわかる。
  Aという事柄を論じているうちに、フロイトはそれに対する反対意見
を読者が提起するだろうと言い出して、今まで述べてきた論旨とは反対
のことを長々と書き出す。
  その次には、反対意見に対する論駁を書き出す。
  こんなことを繰り返すうちに、最初の話はいつのまにかうやむやになっ
ている。これはフロイトを攻撃する人々がけなす理由のひとつです。

  しかし、無意識というものを知っているフロイトにとって、直線的な
論旨展開よりも錯綜する迷路をさぐることこそ、事実をつかむ最善の方
法なのだから、論敵たちの批判は気にすることもない。

  ところが若い頃のフロイトは、他人から論駁されることに神経質なぐ
らい臆病でした。そのために第三者から賞賛というかたちで精神的活力を
もらわないとやっていけない。
  フリースとの付き合いが決裂したあと、フロイトがいちばん変わった
のは、吸血鬼的に他人の支持を欲していた弱い性格が消えうせたこと。
  よく考えてみれば、フロイトはおのれの心の中に、自分を支えてくれ
る存在を見出したのです。

  それはフロイトの心に住みついた信頼できる導師フリースであり、自
分自身を精神分析して発見した自己に棲む父の人格でした。

  フロイトは親友であり、絶対的に信頼できる好意的批判者(=アドバ
イザー)を相手に語りつづけることで、旺盛な執筆活動を可能にしたの
です。
  親友とは、フロイト自身がそうなりたい自己イメージそのものでした。
フリースはそれとは知らずに、中年の危機にあったフロイトの自己イメ
ージ統合に利用されたのです。
  フロイトにとって、精神内のフリースのイメージは、分裂と挫折の危
機に生涯さらされる自分自身の統合のシンボルだった。
   考えてみれば、これほど強い結びつきもないかもしれません。
   恋女房なんて目じゃない――というのは、冗談。

  ただ年齢的に近いフリースだけが、中年以降のフロイトの支えという
のは間違いですね。
「夢判断」を読んでいけばわかるのですが、この本はフロイトが「父な
る存在」と和解し、共棲することを選び取った体験記だとわかる。
「夢判断」にしばしば登場する父のイメージは、執筆中に亡くなった父
ヤコブの亡霊といっていい。
  少年期・青年期と否定しぬいてきた父ヤコブの人生を肯定して、おの
れの一部に取り組む。それがフロイトが行った中年の危機を克服する方
法でした。
  そのことはとりもなおさず、父の愛を改めて確認する作業に他ならな
かった。
  エディプス・コンプレックスという母親をめぐる父親との対立で有名
なフロイトですが、その根底には父との同盟というテーマがある。
  この場合、父とは自分の精神に棲む父親イメージということですが。
  ひどい言い方をすれば、父親の人格と同盟して、親友の人格を屈服さ
せた。そのような精神内部のドラマが、「夢判断」誕生には秘められて
いるのではないか。

  要約すると、心の中に棲むフリースのイメージこそが、フロイトのカ
リスマ性の根源でした。だからこそ、フロイトはそのことに気づきかけ
たユングやフェテンツィのような優秀な弟子を、最後には赦せなくなっ
たのです。

  次回は、フロイトと父について、もう少し書く予定です。

                                      (続く)
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◆ 編集後記:

  このメルマガの発行元のシステムが変更になりました。
  そのため、フッター(最後の部分が変わりました。自由にデザインで
きないので、不便ですが、無料メルマガを利用させてもらっている以上、
文句はいえません。
  発行元によると、本文よりも広告が多いメルマガや、パブジンが発行
元だと明記しないメルマガなど規約違反をする人が後を断たないのでや
むをえない措置だとか。
  たしかに、そういうメルマガは多いからなあ。

  インターネットというメディアがまだ成熟していないことが原因でし
ょう。システムを運営する方としてはたまったもんじゃないのは、わか
ります。
  少なくとも、このメルマガは広告がないから、規約違反にはならない!
発行元も明記していた。その面で言えば、なかなか優秀なメルマガとい
えないこともない。
  ただし、中身がつまらないのは……うーん、仕方ないっかあ!(笑)

            工藤龍大

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