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■    ■                                      No.024  01/11/18    
■      ■          http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/   
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■        ■      ドラゴニア通信                                  
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==== Index ===================================================

01: 先週のお薦め読書日記
02: エッセイ「ハリウッド聖書学」
03: 編集後記

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◆ 先週のお薦め読書日記

  このメルマガもずい分長いことお休みしていました。
  その間もサイトだけはちまちま更新しています。
  雑談日記は、ほぼ毎日更新中です。

  久しぶりに今週のお勧め読書日記です。

【今週の読書日記】

   「世界は一つという事の意味」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d27b.htm#14

  いつのまにかブームになり損ねたモンゴル。
  でも、世界史はチンギス・ハンの征服事業から始まった。
  シルクロード経由の東西文明の交渉はヘレニズム文化の賜物。
  これも世界文明と言って良いでしょう。
  ただし、こちらの広がりには時間がかかっている。
  モンゴル帝国の功績は、従来に比べて人と物の交流がはるかに安全
  に、そして短期間にできるようになったこと。

   「漢字は楽しい」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d27b.htm#17

  魏史倭人伝とか、隋書倭国伝とか、高句麗好太王碑銘という名前は、
高校の日本史でおなじみのはず。特に最初の二書は、邪馬台国ファンや
『日出処の天子』ファンなら必読。岩波文庫の「中国正史日本伝(1)・
(2)」を読んでわかったのは、漢字文化のありがたさでした!


   「聖書の作り方」
    http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/dy/d27b.htm#18

  山本七平氏の旧約聖書学にこっています。これは『聖書の常識 聖書
の真実』『禁忌の聖書学』といった山本七平流聖書学を通読して分った
聖書の真実です。(笑)
  聖書は世界文明の子供だった!


【今週の雑談日記】

雑談日記は、下記のページから行けます。
(テキストのファイルは変わる可能性があるので、ブックマークや「お
気に入り」に登録する場合は、トップページか読書日記のページからお
願いします。)

  ●トップページ
   http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/
  「白昼の虹 : 日々是好日的雑録:毎日絶対更新!」のリンク
  ●読書日記
   http://www32.ocn.ne.jp/~thkudo/page/diary.htm
  「雑談日記」のリンク

  <主なトピック>
  ・自然愛好と足の運び
  ・本は読まないけれど字は読んでいる!
  ・からだの感覚と言葉の使い方
  ・常識とは情報を信じないこと!

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◆ エッセイ「ハリウッド聖書学」

  旧約聖書の有名な話はいくつもあるけれど、不思議なことに西洋文学
や絵画のモチーフでありながら、わたしたちが手にする日本語聖書には
ないお話が結構ある。
  悪魔と人間の騙しあいが面白いトビト書などもそのひとつ。

  理由は聖書にちょっと詳しい人なら知っている。
 この部分は、従来「アポクリファ」または「旧約聖書外典」と呼ばれ
プロテスタント系の聖書には入れられていなかった。
  読書日記でも書いたけれど、この部分はギリシア語で書かれたので、
ヘブライ語原文がない。ヘブライ語原典でなければ、旧約聖書と認めな
いというドイツ人文主義者(ロイヒリンという人)の主張を、くそ真面
目なマルティン・ルターやカルヴァンなんかが取り入れたので、プロテ
スタント諸教会の聖書には「アポクリファ」はない。
  日本でのキリスト教布教はもっぱらアメリカのプロテスタント系教団
が行ったので、一般の日本人にはその部分を目にすることがなかった。
  清教徒とは、スイスで誕生したカルヴァン派がフランス経由でイギリ
スやスコットランドに広まり、発達したもの。
  細かい詮索を抜きにすれば、アメリカ建国の根っこというべき「プリ
グリム・ファーザーズ」はカルヴァンの一分派と呼べないこともない。

  しかし、新共同訳という新しい日本語訳聖書には、アポクリファを含
めた版がある。
  これはアポクリファを含めたカトリックと、プロテスタント諸教会の
共同事業なので、出来たことである。

  とはいえ、まだ問題がある。
  このアポクリファにさえ載っていないいろいろな事実を、欧米人のち
ょっと利口な人は知っている。
  たとえばモーセがエチオピアに遠征したとか。
  もちろん、こんなことは旧約聖書のどこにも書かれていない。

  どこから、このような話が出来たのか、いつも不思議に思っていた。
  その他にも、だれも知るはずのない「個人名が伝わっていない」旧約
聖書の人物の名前を、なぜ欧米人が知っているのかという疑問もある。

  その謎がやっと解けた。
  山本七平氏の『禁忌の聖書学』という本のおかげである。

  ローマ時代にフラヴィウス・ヨセフスという歴史家がいた。
  ユダヤ人でありながら、ローマ貴族だった。なぜ、そんなことになっ
たかは、ここでは関係ないので省略する。
  山本氏によると、この手の旧約聖書に書かれていない事実は、このヨ
セフスが書いた『ユダヤ古代誌』という書物に書かれているらしい。
  この本は欧米の知識人にはそうとう読まれていて、しかもこれを下敷
きにして多くの子供向け聖書物語も書かれている。

  つまり、旧約聖書のどこにもない事実が、欧米人の頭の中に厳然とし
て存在するのは『ユダヤ古代誌』のおかげである。

  この国で言えば、佐々木介三郎とか渥美格之進といえば、水戸のご隠
居を思い出すようなものらしい。
  両人とも歴史的には存在しない架空の人物である。

  これがいいすぎであるとすれば、わたしたちの頭の中にある日本史の
名場面がほとんど江戸時代の大ベストセラー、頼山陽の『日本史外史』
の創作にすぎないのと同じである。

  いまはハリウッドで聖書を題材にした映画などまるで作られなくなっ
たけれど、カラー映画が出来た当時、どしどし作られた聖書映画の下敷
きは旧約聖書ではなく、『ユダヤ古代誌』だったらしい。
  なるほど、旧約聖書にかかれていない事実がばんばん出てきても不思
議はない。

  こんなことは案外多い。
  いま話題のイスラームにしたところで、コーランを読んで「イスラム
教(注:西洋風にあえて表記してみた)の本質的な好戦性」を論じるの
は無駄だろう。

  イスラームにさえ『ユダヤ古代誌』のようなよりポピュラーで、外国
人が知らない常識の源があるにきまっている。それは、『ハディース』
のようなイスラーム的な民法・刑法の集大成を読んでみてもわからない
かもしれない。

  ことほどさように、常識というやつは手におえない。
  用心するにこしたことはない。
                                                 (終)

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◆ 編集後記:

  早いもので、前回このメルマガを発行したのが、9月30日。
もう一ヶ月以上たってしまいました。

  このごろ聖徳太子がマイブーム(まだ死語じゃない?)です。
嬉しいことに、NHKが東京都美術館の「聖徳太子展」に協力している
せいか、太子関係の番組をいろいろ作ってくれています。
  なかでも地方局が制作したものが味がありますね。
  各地の太子信仰を尋ねる番組は、地上波で11月10日にも再放送し
ていました。さすがに二度は見なかったけれど。
  ところであの番組の終わりに、作家・立松和平氏が出演していました。
読書日記でも書きましたが、北海道の斜里町にログハウス風の聖徳太子
のお堂を手作りで建てたのです。ナレーションで、立松氏は「いつか聖
徳太子の小説を書こうと考えています」と言っていました。
(ちなみに「(最近)○×さんは〜をしようと考えています」という
のは、NHKドキュメンタリー独特の用語です!
  気をつけてみていると、必ずこの言葉が登場する。NHK用語として
使用が義務づけられている?)

 その第一歩なんでしょうが、わが愛読誌『大法輪』で立松版・聖徳太
子の連載が始まっています。

 どんな風になるか、ちょっと楽しみです。
 『遠雷』みたいな聖徳太子とか?

            工藤龍大

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